養液栽培

情報の泉Vol.005

養液栽培入門① どうして養液栽培?

養液栽培入門開始!

このホームページにアクセスして頂いている方で、養液栽培って何?という疑問を持ちながら見ている方も多いのではないでしょうか。
そこで、皆様に養液栽培とは何かということをよく理解していただくため、「養液栽培入門」シリーズとして、数回にわたり養液栽培の基礎知識の紹介をしていきたいと思います。

養液栽培って何?

「養液栽培」とは、土を使わず、植物に必要な肥料分を“養液”と呼ばれる液肥(水に肥料を溶かしたもの)の形で植物に与えて育てる栽培方法のことです。植物に必要な肥料分とは、最も重要な肥料分の“三要素”、NPK(窒素・リン酸・カリ)やマグネシウム、カルシウム、微量要素の鉄・マンガンなどです。

どうして養液栽培?

なぜ養液栽培が広がってきているかを考えてみましょう。
養液栽培を行うことにより、回転率が上がる、品質が上がる、技術的な格差が少なくなり、誰でも高収量を上げることが出来る、といった利点が挙げられます。そのため、安定した農業経営を営むことが出来ると言われています。
それでは、なぜこのようなことになるのでしょうか?養液栽培にすることで何が変わるのでしょうか?主な理由をいくつか挙げてみました。

1.連作障害の回避
連作障害とは、同じ作物を何年も続けて同じ場所で栽培すると、生育が悪くなったり、枯れてしまったりする現象です。連作障害の原因は大きく二つあります。一つは病気によるものです。同じ作物を続けて栽培し、土壌病害にかかってしまうと、その病気が土壌に残り、次年度以降も同じ病気にかかってしまいます。もう一つは塩類集積によるものです。与える肥料に対して残っていく肥料が多い場合、どんどん残ってしまい、最後は肥料の過剰障害が起きてしまう可能性があります。
こういった連作障害を回避するために、養液栽培が用いられています。根圏環境のモニタリングがしやすいため、塩類集積による障害を未然に回避しやすいこと、また、根圏が土と隔離されているために、土壌病害の土からの伝染がほとんどないこと、また、隔離されているために病原菌が残らない様にベッドの消毒がしやすいこと、が連作障害の起こりにくい理由です。
2.省力化
土耕栽培で連作障害を避けるためには、土壌消毒としっかりとした土作りが必要となります。しかし、周りの土壌と隔離されていない通常の土耕栽培では、完全な土壌消毒は難しく、土作りには手間もかかります。方法論はいくつもあり、うまくいかないことも多くなります。このような土作りに使っていた労力を無くし、その分を栽培管理などに配分することで、労力をより有効に作物の生産に向けることが出来ます。また、土作りをする必要が無いことで、収穫が終わった直後に新しい苗を定植することが出来、栽培回転率を上げることが出来ます。
3.管理のマニュアル化が可能
養液のみでの栽培や均一な培地を用いた栽培のため、栽培管理がしやすくなります。また、栽培ベッドの状態をモニタリングすることが出来、生理障害の発生等を事前に回避することが出来ます。こういった養液管理方法のマニュアル化を図ることにより、初心者の方でも気軽に栽培に取り組むことが出来るのです。
4.培地温度の制御で生育スピードがアップ!
養液栽培では効率的に培地温度や培養液温度を調節することが可能です。これにより根の活動が活発になり生育スピードが早くなります。このことが収量を増やす大きな要因となり、また、根が活発化することで品質の向上ものぞめます。

養液栽培ってどんな種類があるの?

養液栽培は、その形態によって下記のように分類されます。

みなさんも“水耕栽培”という呼び方を聞いたことがあるのではないでしょうか?“水耕栽培”とは、養液栽培の一種で、根を支える土の代わりをするもの(“培地”と呼ばれます)を使わず、根が“養液”に浸かった状態で栽培する方法です。例えば、“養液”をプール状に貯め、そこに根を伸ばさせる“湛液(たんえき)式”と呼ばれる方法が代表です。
“培地耕”は、根を支える“培地”を用いた栽培システムで、“培地”にはロックウールの他、ヤシ殻などの有機培地が用いられます。
“噴霧耕”は、根にスプレー状に養液を吹き付ける方式です。キュウリなど、根の酸素要求量が多いものは、このような噴霧耕方式が適しています。
カネコ種苗(株)では、作物の特性に合わせた各種の栽培システムを販売しています。各作物にベストの環境条件を作ってやることにより、より高水準な栽培管理を行うことが出来ます。是非お問い合わせ下さい。